川添産婦人科の沿革と理念


当院は創業以来84年の間、『学問にもとづく医療をもって
社会に奉仕する』という 初代院長 川添正道の教えを守り、
この四谷、新宿の地域医療に携わってまいりました。

創業以来、85年以上が経過し、女性を取り囲む時代の変化とともに、
地域の産婦人科の医療も役割も変化してきました。



川添産婦人科の沿革

理念と役割
 





初代 川添正道(1871-1961)







川添兼久(1921-2008)





















































川添産婦人科の沿革
since1935

 川添産婦人科は昭和10年(1935)、初代川添正道によって新宿内藤町に開業されました。
川添正道(1871-1961)は第五高等中学校医学部(現在の長崎大学医学部)を卒業後、日清戦争で割譲され設置された台湾総督府医学校(現台湾大学医学部)の産婦人科教授として若干24歳にして赴任し、台湾の近代産婦人科学の発展ならびに台湾助産師の育成に大きく貢献しました。2回のドイツ留学を経て、長崎大学教授を務めた後、慶応大学病院開設に伴い北里柴三郎初代医学部長に招請され、大正8年(1919)に同学産婦人科講座の初代教授に就任しました。同病院の産婆学校の創設や日本産婦人科学会会長を務めるなど、日本の近代産婦人科の礎を築きました。62歳で慶応大学教授職を退官した翌年、昭和10年(1935)、四谷 内藤町に川添産婦人科病院を開業し、86歳まで医療をもって奉仕してきました。川添式尿管結紮法をはじめ、当時ドイツで隆盛していた女性ホルモン研究や、当時の不妊研究、子宮卵巣癌の診断において有名でした。

正道の跡を継いだ二代目の川添兼久(1921-2008)は、長崎大学医学部を卒業後、第二次世界大戦のため軍医として南西諸島へ出征し、生還後に医学の道に戻ります。川添正道の教えを受け慶応大学医学部より博士号を授与されたのち、初代正道が没後、2代目院長に就任しました。初代の教えを守り、戦後の第一次ベビーブーム、昭和40年代後半の第二次ベビーブームの出産に立ち会うとともに、集団就職で上京した身寄りのない女性に対しても分け隔てなく医療を提供し、地域に還元奉仕してきました。 また1980年代に脅威となったHIVに対して、88歳でなくなるまでHIV診療の最前線で診療を続け、医学に身を捧げました。

三代目となる私も20年間の医学部教員、30年間の日本産婦人科医会役員として絶えず先進の産婦人科医療に関わり続けてまいりました。現在、四代目となる息子とともに診療にあたっています。 


当院の理念と役割

・心の通うコミニュケーションと学問にもとづいた診療を通じて、安心、安全な母児の周産期管理と信頼される婦人科診療を提供します。
・惜しみない説明と丁寧な診療を行い、地域の皆様の
手の届く産婦人科医療を提供いたします。

時代の変化とともに、地域の産婦人科に期待される役割も大きく変わりつつあります。

産科領域では、かつて年間270万人出生していた日本は、2019年には89万人しか生まれない国となりました。経済の低迷に伴う晩婚化は避けられず、一人の女性が出産する子供の数も減少し、1回の出産は、母児にとって、より安心・安全なものであることが要求される時代となりました。妊娠・出産管理はより快適かつ利便的であることが求められる一方で、出産に携わる産婦人科医、助産師、看護師に求められる安全性への要求はより高度になりつつあります。そうした意識の高まりの反面、現在でも予期せぬ妊娠や出産後の児の虐待、無知ゆえに罹患してしまう性感染症などは後を絶ちません。

一方婦人科領域では、女性は非妊娠期間が長くなり生涯に迎える月経回数が増加したことで、婦人科良性疾患である子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症などによる月経困難症や過多月経、貧血などの症状に悩まされるようになりました。また男女共同参画社会となった反面、女性も男性と同じストレス社会に生きることが余儀なくされ、生命の中枢である視床下部の変調をきたして月経異常や排卵障害に悩む女性が増加しています。

現代の女性は自身の排卵や月経による体調変化について、よくよく観察しておく必要があります。しかし、それを知るために必要な性への理解や月経についての正しい知識は、以前であれば幼少期から家庭で母や祖母から教えられていたものですが、現在では家庭でも公教育でも欠落し、産婦人科の現場は混沌としています。一度減少した性感染症が再び増加傾向にあったり、排卵を抑制するピルを、月経とは何かを理解する機会を全く与えられないまま、容易に処方されています。

私ども地域の産婦人科は、以下のようなメッセージを発信しないといけません。

・女性は自分自身の性について、月経についてきちんと知っておかないといけません。
・そのためにも、当院ではしっかりと時間を割いて月経のしくみから説明致します。
・男性は、あなたの子供を産んでもらう女性を大事にして下さい。
・月経のような出血があるからといって、きちんと排卵しているとは限りません。
・月経のような出血があるからといって、何歳になっても妊娠できると考えてはいけません。

・予期せぬ妊娠によって、若い女性の人生が追い詰められる未来は防がねばなりません。
・産後の女性を、子育てと仕事で追い詰めてはいけません。地域社会で守る必要があります。
・知識不足によって、性感染症を自分自身、大事な人、子孫に伝えてはいけません。
・子宮頸癌、乳癌は社会で予防しなければなりません。
・人生100年と呼ばれる時代に女性が閉経後も健康を保つためには、 女性ホルモンが必要とされる時代となっています。
・地域の産婦人科が、地域の女性に正しい知識の普及を行い、女性の健康を守らなくてはなりません。

現代社会の多くのことが、地域の産婦人科の役割を新しいものにしています。 四谷の地域の女性の健康を担う当院は、皆さんがより正しい知識を持って、月経や妊娠、出産、婦人科疾患、更年期、閉経後の老年期の生活に元気に向き合っていただけるよう、丁寧な説明と診察、治療を行います。女性の健康、治療に限らず、健康予防や女性の性についての相談でも構いません。いつでもご相談ください。私たちは手の届くところにいる産婦人科として、知識と医療とケアを提供いたします。

子供もお母さんもお父さんもおばあちゃんもおじいちゃんも、 健康で明るく過ごせる社会のために、川添産婦人科は開業100年を目指して、スタッフ一同、地域医療に貢献してゆきます。

医療法人社団川添記念会 四谷川添産婦人科 院長  
力武 義之